2026年9月7日月曜日

娘がアイドルに嵌まる


 ピイガが5人組ボーイズアイドルグループに嵌まった。
 グループ名は「げっPO」(げっぽ)。
 そしてこのアイドルグループ、実はピイガのオリジナルだという。
 最初は紙にペンでメンバーの顔などを描いていたのだが、それを元に対話型生成AIにメンバーのビジュアル作成を依頼したところ、げっPOは一気に実在のアイドルとなった。
 対話型生成AIが作成する、とりあえず目鼻立ちだけは異様に整っている、象徴的で無個性な相貌というものは、要するに現実のボーイズグループの組員が一様に目指し、メイクや加工などでそう仕立てている、そのまんまのものなのだと、げっPOの作成イメージを見て悟った。
 かつて僕は、AIで作成されたグラビア画像をやけに見ていた時期があって、そのときは「もうグラビアは架空の理想の女の子でいいや」と、罰当たりなことを思ったりもしていたが、しかしそう感じていた期間は意外と短く、今はまた現実の、理想に対してドンピシャではない顔だったり肉体だったりする女の子のグラビアを、それぞれの個性を尊重して、むしろその部分をこそありがたく眺めているのだけど、その点、いまどきのボーイズアイドルグループというのは、各人が追い求める見た目というのが本当に統一されている感があるので、対話型生成AIが「こういうことやろ?」と半笑いで出力した画像は、なんかもう、本当に、実在の彼らが必死に作り上げている見た目そのものなのだった。
 なので、ピイガと対話型生成AIが作り出したげっPOは、ぜんぜんいる気がする。俺はこいつらを先週のカウントダウンTVライブライブで観たよ、と思う。本当にはもちろん観ていないのだが、本当に観たやつらと、げっPOの、区別がつかない。そういう意味で、げっPOはやっぱり実在するんだと思う。
 しかしここまでなら、たぶんいまどきは大勢の輩がやっていることなのだろうと思う。オリジナルアイドル創作界隈というものが、実際にあるのかないのかは、そんなジャンルを探ったことがないので知らないが、あまりにも簡単にできることなので、ある程度の人数は既にやっているんじゃないかな、と思う。
 ただしここから先がピイガのすごいところで、誰に似たのか、ハンドメイドというか、小物作りというか、そういうことをするのがとても好きな性分であり、そういう性質の人がオリジナルアイドルを作ったら次にどういうことをするかと言えば、そのオリジナルアイドルの、オリジナルグッズを、次々に作りはじめたのである。シール、うちわ、ステッカー、缶バッジなど、わが家にはどんどん、げっPOグッズが増殖してきている。思春期の娘が、ボーイズアイドルグループに嵌まって、グッズを集めている、というのはよくある風景だが、わが家の場合、グッズは手作りだし、さらに言えばそのアイドル自体もまた手製なのだった。
 もちろんピイガは、げっPOを自分の理想のアイドルとして作っているわけではない。本当に自分好みに仕立てているわけではなく、詳細は彼女の創作物なので勝手には語らないが、その設定はだいぶウケ狙いに走っている。つまり欲求から来る創作ではなく、半笑いで、対話型生成AIのそれと同じく、「こういうことやろ?」の気持ちでやっているのだ。オリジナルグッズ製作も、もともとそういう手作業が好きだという実利はありつつ、当然その悪ふざけの一環だと言える。
 そう考えるとなかなか手の込んだ嫌がらせだ。なにに対する嫌がらせかと言えば、いまの、ボーイズアイドルグループ隆盛の時代そのものに対してだろう。思えばピイガは、これもまた誰に似たのか、人の好きなものは好きじゃない、という性分があり、1年前のちびまる子ちゃんランドでは、盛況するコジコジグッズ売り場で、顔を真っ赤にして憤怒していた。またボーイズアイドルグループと言えば、当世はなんと言ってもM!LKということになるが、そもそもわが家で最初にM!LKに注目したのはピイガであったのに対し、それからファルマンと世の中がド嵌まりしたことで、いまも一緒にM!LKの出演している番組などを観てはいるが、ゲヘゲヘ言いながら観ているファルマンに較べ、ピイガの反応は明らかに冷めているのだった。
 そう考えればこの、げっPOというオリジナルアイドルの創作は、ファルマンをはじめとした、その界隈に対する皮肉であると同時に、誰にも侵されない、誰とも競合しない、絶対にひとり占めできる敬愛の対象を持つ行為であるとも言え、なるほどなあと深く感じ入るのだった。省みれば僕には、MAXファンという設定があるのだけれど、なんでMAXなんかのファンをやろうとしているかと言えば、それは誰とも競合しないからに他ならず、しかし誰とも競合しないということは、それだけ対象とするものの地力がないわけで、ここが同担拒否勢の悩ましいところなわけだが、娘が現代技術を利用して実現した、オリジナルアイドル創作というのは、その命題を見事なまでに解決しているのではないかと思った。
 だから僕も、娘に倣って同じようなことをはじめようと考えている。たぶんピイガのようにうまくいかない。僕の創るガールズアイドルグループには、きっと個人的な欲求が投影される。そういう意味で、純粋な創作からは逸脱する。その結果は目に見えている。でもせっかくなのでやろうと思う。