2026年3月8日日曜日

「スク水メイドがご奉仕します!」を読んで


 11冊目。2010年11月刊行。通し番号は171。
 あらすじはこちら。

 学校では憧れの先輩たちは……家では、なんとボクのメイドさん!? プールでお風呂で、ダイタンなスク水姿で迫られちゃう夢の生活。幼なじみのツンデレメイドと世間知らずのお嬢さまメイドの二人による全身を使ったご奉仕に、少年の理性は沸騰寸前!!

 どういう事情なのかは分からないが、前作に引き続き、「学校では秘匿されているが資産家の息子である主人公の自宅では学園のマドンナが少年の専属メイドをしてくれている」という設定のお話である。ただし前作と大きく異なる点として、今回はヒロインがふたりいる。前作ははっきり言って駄作だったが、今回は果たしてどうだったか。
 これがすごくよかったのである。
 そして今作を読んだことで、前作のなにがあんなにダメだったのか、その答えがはっきりと分かった。
 それはヒロインがひとりしかいなかったからだ。
 多ければ多いほどいい、とは言わない。でもやっぱり単独ヒロインはあり得ない。二次元ドリーム文庫の読者は、純愛の恋愛小説を読みたいのではない。女性器の穴に溜めた紅茶を飲む話が純愛かという議論はさて置くとして、主人公がひとりの女の子しか相手にしないという意味での純愛ものは、やはりどうしたって弱いと思う。なによりドリーム性が低い。現実では実現がほぼ不可能な、ドリーミーな世界に浸りたくてこちらは読んでいるのだから、女の子は必ず複数人であるべきなのだ。必ず、である。強い言葉で断言する。必ずそうであるべきなのだ。そうでなければ意味がないのだ。
 著者自身、それについて確信した部分があったのか、作中にはそれに関する記述がしっかりとある。主人公の少年は、ふたりのメイドと関係を持ったあと、そのことに対して煩悶する。そして少年のその苦悩を悟ったメイドは、彼の入っている風呂にふたりで突撃する。

 ふたりとも前のめりになり、片や挑発するように、片や懇願するように、ご主人様を見詰めてくる。中毒性の色香がバスルームに立ち込め、のぼせずともくらっとする。
 このまま年上のお姉さんたちに翻弄されてみたい。
「えぇっと、だ、だけど……」
 しかし即断できなかった。さっきも悩んでいた罪悪感が本能の出鼻を挫く。お湯の中に身体を隠し、一成はメイドたちに初めて、まともに意見した。
「だめだよ、今更こんなこと言えないのは、わかってるけど……スイ姉も紅亞も、ふたりともエッチの相手にしちゃうなんて、その……よくないこと、だと思うし」
 にもかかわらず、翠はオッパイでじりじりと迫ってくる。
「ナル坊のくせに言うようになったじゃない。だ、け、ど……あたしと紅亞さんのどちらか、なぁんて、選べないでしょ?」
 年下の男の子の考えそうなことなどお見通しとばかりに、意地の悪さと包容力の深さを併せ持った顔つきで微笑む。
 彼女の言う通りであって反論できない。優柔不断だからこそ決めあぐねているのだ。
 翠と同等に手放すことなど考えられない、もうひとりのメイドが、柔らかな笑みを浮かべる。まなざしは真剣な愛情に満ちていた。
「それはご主人さまがお優しい証拠ですわ。ご主人さまのような方にお仕えできて、わたくし、とっても幸せなんですよ? ですから、今日はご奉仕を……」
 ただでさえ少年は押しに弱いのに、二対一で迫られては、勝てるはずがない。
「でっ、でも……あうぅ」

 このあと少年はふたりがかりでパイズリフェラされる。その乍中に翠は言う。

「ご主人サマ、どお? メイドさんがふたりいないと、んぁはっ、こんなふうに、挟んであげられないんだから」

 ちなみにだが、この物語において、このふたりのメイドに互いに対する対抗心は一切見受けられない。学園では生徒会長と副会長を務めるふたりは、どこまでも協力して、ひたすら少年を奉仕する。そこがまたいい。主人公とふたりのヒロインという3名の間に流れる空気は、どこまでも甘美で優しい。普通の物語であれば、「もっと感情に起伏がないと!」などと注意されるかもしれないが、エロ小説にそんなものはいらない。なごやかで心地よく、そしてエロければ、あとは別になにも必要ないのだ。
 今作はそれがとても高い次元で表現されていた。名作だと思う。ちなみに僕の中で今作は、スク水メイド3部作と括っている3作品の、ひとつ目である。ここから神楽陽子は円熟期に入る、かと思ったら、しかしそう一筋縄にはいかないのだけれども。