2026年1月12日月曜日

だいぶ特殊なタイプの怖い話


 だいぶおそろしい出来事があった。
 まず、水着が売れたのである。しかも10枚いっぺんにである。これ自体はとてもめでたい。売れただけでも嬉しいのに、10枚だなんて。ちなみに買ってくれたのは初めての人で、初めてなのにいきなり10枚も買って大丈夫かな、という思いは多少あった。
 この導入から、なんかフリマアプリ特有のトラブルの話かな、そういう話は心がクサクサするから嫌だな、と思うかもしれない。安心してほしい。そういう分かりやすい話ではない。
 ちょうど3連休中の購入だったので、すぐに出荷準備ができた。在庫入れのケースから注文の10点を抜き出し、改めての検品を行なった。いつもなら続いて梱包だが、なにしろこれまで10枚などという発注はなく、想定もしていなかったので、そんな体制ができていない。水着が2枚まで入る、ゆうパケットポストminiの封筒しか用意していないし、封筒にプリントされたQRコードを読み取って投函するだけのこれと違い、箱の場合はどういう発送の段取りになるのか、さっぱり分からないのだった。
 仕方なく休日もやっている中央局まで行き、そこで窓口の人に相談してやり方を教えてもらう。おすすめされた箱を言われるがままに購入し、その場で箱詰めを行なった。しかし水着10枚(実はおまけで1枚つけたので11枚)の体積というのはなかなかのもので、箱はかなり不格好に膨らんだ。ふたたび窓口に戻ってそれを見せたところ、膨らんだ分の厚みで配送料金が変わってくるギリギリのところらしく、向こうもそのサイズの箱を僕に買わせた負い目があるのか、「ちょっと収まるようにこちらで詰め直してもよろしいですか」と提案されたので、「ぜひお願いします」と託した。ちなみに窓口の職員、女性。これはなかなかニッチな性癖に突き刺さるタイプのセクハラかもしれないな、などと思った。
 そんなてんやわんやもありつつ、なにはともあれ送ることができ、あとは注文者さんのもとに無事に届いて、受け取り評価をしてもらえたら、なかなかに嬉しい金額が入金されるなあ、と思っていた。しかし3連休だし、全国的に荒れた天気のようだし、もちろん匿名配送なのでどこの人かは知らないが、届くのは週の半ばくらいになるかもな、と。
 ところがである。
 先ほど見たら、到着の連絡とともに、売上金が入金されていた。
 速すぎる。だって日曜日と祝日だ。これはさすがにちょっと速すぎると思う。ではなぜこんなにも速かったのか。考えられる理由はひとつしかない。
 近いのだ。
 県内、いやもしかすると同市内でさえあるかもしれない。そしてそう思った途端、初めての注文なのに10枚まとめての注文であったという事実が想起され、ぞわりとした。
 注文者さんは、この水着を、知っているのではないか。
 だからこんな注文ができたのではないか。
 なぜ知っているか。いるのである。Nobitattleの水着を、実地で、まるで周囲にプレゼンするかのように、毎回のように異なる柄のものを穿いてプールに現れる男が。それで、直接その男に訊ねたわけではないが(やけに話しかけるなオーラを出しているので)、あんな水着も世の中にはあるんだなあ、どこで売ってるのかなあ、と気になったので、少しキーワードを挙げて検索したら、まんまとヒットしたので自分も買って穿いてみようということになったのではないか。
 いや、それはだいぶ自意識過剰な、そして世界をとてつもなく狭く捉えている人間の暴走した妄想だ、とも思うが、それにしたってこの速さはないだろう、そしていきなり10枚注文はないだろう、という反論にも一定の説得力があるのだった。
 答えはいつの日か、ホームプールで明らかになるかもしれない。しかしホームプールに自分以外でNobitattleの水着を穿いている人が現われたら、いったい僕はどんな顔をすればいいのだろう。「毎度ありがとうごぜーやす」って言えばいいんだろうか。